人員を増やすために採用活動を始めてみても、会社の規模や業種、社会情勢によってはなかなか人を集めるのが難しかったりもします。さらに、社員を1人を採用するためにかかるコストをは膨大で、それを考えると頭が痛くなる人事の人もいるのではないでしょうか。

ここでは、通常の「採用」以外に採用コスト、採用リスクを軽減できる方法を、ご紹介します。

在籍出向は採用担当者の悩みを一挙解決する手段だった!

■出向の受け入れは通常の中途採用と何が違う?

・中途採用はどのように行う?

・在籍出向受け入れの場合はどのようなステップがある?

■在籍出向は採用担当者の悩みを一挙解決する手段だった!

採用コストを大幅に削減する方法。それはずばり「在籍出向」です。在籍出向は、出向社員が出向元と出向先の両方と労働契約を結んで、出向期間中は出向先で働くという仕組みです。出向先の企業は出向元の企業と出向契約を交わして働き手に来てもらいます。、そのためそもそも採用するために広告を出したり、ナビサイトに掲載したりと、宣伝をする必要がないためコストがかかりません。また、出向には在籍出向と転籍出向の二つがあり、在籍出向を選ぶということは、出向元が解雇したくない優秀な人材という可能性が非常に高いため、低コストで優秀な人材に働いてもらえるということです。

また通常の採用を行った場合、採用コストをかけてようやく採用を決めた社員がいたとしても、入社前に内定辞退があったり、ドタキャンにあったりする可能性もあります。ですが在籍出向の場合は、個人との契約だけではなく会社同士の契約も結んでいるため、よほどのことがない限り出向辞退やドタキャンが起こる心配はありません。なぜなら出向元の企業の信用問題にかかわることになるからです。

これが、企業と個人との契約ではなく、企業間の契約がある強みです。

さらに言うと、人手が足りなかったり、将来人手不足になるのを見越して新しい人員を採用したりしたとしても、いざ働いてもらうと合わなかったという可能性もあります。能力的に厳しかったり、人間関係がうまくいかなかったり。そうなると、その人を入社させるために採用コストをかけ、再び人員を採用するためにさらに採用コストをかけることになってしまうのです。ですが、在籍出向の場合は、仮にマッチング度が低かったとしても、出向期間を決めて社員として働いてもらうので、職場に合わなかった場合のリスクが低いというメリットがあります。

つまり、採用が難しい場合、在籍出向で受け入れ先企業となることで、採用コストもリスクも抑えられるということです。

➡参考 出向を“受け入れる”企業が知っておきたいこと

さらに、給与面でもメリットがあります。現在新型コロナウイルス感染拡大に伴い、企業によっては雇用を維持するのが難しくなり、一方で特需となった企業では人員不足が課題となっている現状があります。これまでは雇用維持が難しい企業にのみ雇用調整助成金が支払われていましたが、これが徐々に縮小され、産業雇用安定助成金に切り替わります。この産業雇用安定助成金は、出向元企業と出向受け入れ先企業の両方に助成金が支払われるため、受け入れ先企業は優秀な人材を通常よりも低い給与負担で雇うことができるのです。

➡参考 在籍出向で使える「産業雇用安定助成金」とは?「雇用調整助成金」と何が違う?

ただし、これは在籍出向のみが対象で、かつ子会社や関連企業間の出向には適用されないため、注意が必要です。

■出向の受け入れは通常の中途採用と何が違う?

では実際に、通常の中途採用の流れと、出向受け入れの流れの違いについて説明します。

・中途採用はどのように行う?

中途採用の場合は、どの部署にどんな人材を入れたいのか、何を基準に採用を決定するかの採用計画を立てることから始めます。採用方針と採用基準が決まっていれば、面接を始めてからぶれることも少なくなるでしょう。

その後、採用ターゲットが見ているであろう求人情報誌やメディア、ハローワーク、転職エージェント、ダイレクトリクルーティング、SNSなど、欲している人材に合わせて募集をかけます。応募が来たら、書類選考、面接(場合によっては採用試験)、を経て採用決定というのが流れです。

募集から書類選考、面接までの流れは、大体1か月ぐらいですが、中途採用の場合はもっと短く設定している企業もあります。

中途採用が決まったら、入社前までに内定通知書、雇用契約書、労働条件通知書、入社承諾書、誓約書を送ります。入社日にいくつかの契約書を出してもらい(入社前に戻してもらう場合もあります)、社会保険、雇用保険、税金関係の手続きなど市区町村に提出するものも期限内に行う必要があります。その他にも労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等の作成も人事が行うことです。

・在籍出向受け入れの場合はどのようなステップがある?

出向を受け入れる場合、ハローワークなどに相談したり、民間の在籍出向をマッチングするサービスを利用します。

出向元と出向先が決まったら、企業の間で出向契約を結ぶ必要があります。出向契約、出向規定は基本的に出向元の企業が作るものです。それを出向先の企業が確認し、問題なければ、受け入れる人材(出向社員)の勤務態様・条件を出し、出向元と出向先の企業とで、出向社員に対してどちらが給料をどれだけ払うのか、社会保険はどうするのかというところまで決めてしまいます。というのも、出向社員に出向先で働いてもらう際に、どちらの企業がどれだけ負担をするのかは法律で決まっていないため、両企業での話し合いによって決めるものだからです。

両企業での話し合いが終わってから、出向社員に条件を見せて合意を得られたら、出向社員と面談をし、出向同意書にサインをしてもらえば、あとは分担に応じて中途採用と同じく入社後の手続きを行って入社となります。

➡参考「在籍出向と移籍出向(転籍)、派遣の違いを理解することで問題を回避できる

在籍出向を受け入れる場合、出向期間があるため、期間限定にはなりますが、新卒採用や中途採用、派遣社員を雇うよりも採用コストがかからないのが特徴です。すぐにでも働き手が欲しいと思っているのであれば、一度在籍出向という手段も候補に入れてみてはいかがでしょうか?