これまでの常識を変えていった新型コロナウイルスは、企業の採用に対しても大きな影響を与えています。コロナ前と同じような採用方法ではうまくいかなくなっていると感じる人事担当の方も多くいらっしゃるはずです。では、どのように変わったのか、これからのコロナ禍においてどうしていけばいいのかを一緒に考えていきましょう。
■採用方式も価値観も大きく変わったウィズコロナ時代
ウィズコロナ時代に入り、採用方式も就職や転職を考える人たちの価値観も大きく変わってきました。例えば採用方式では、これまで「面接」というと、志望者に会社まで来てもらって、対面での面接を行うのが当たり前でした。会社説明会なども同じです。ですが人との接触を避けるために、オンライン化を進めざるを得ない状況となりました。
また就職や転職を考えている人たちの意識も変わりました。コロナ前から安定志向や健康経営をしている企業への関心が高まり、働き方の自由度を重視する考えが出始めていましたが、ウィズコロナ時代に入り、そういった考えの人が急速に増えています。新しい時代での採用や会社としての在り方は、今変化の時を迎えていると言ってもいいでしょう。
■採用方式はどう変わった?
ではウィズコロナ時代に入って、採用方式がどう変わっていったのか具体的に見ていきましょう。ひとつ前の項目でも少しお伝えしましたが、採用の現場はオンラインで行うことが増えました。

【コロナ前】
会社や会場での会社説明会
↓
会社での採用試験
↓
会社での集団面接もしくは個人面談
【ウィズコロナ】
オンラインでの会社説明会
↓
オンラインでの採用試験
↓
オンラインでの面接
という変化があります。採用を行う際には、すべて直接対面をして話をしたり、筆記用具を持って試験に臨んでいたりしていたのですが、今の時代ではそういったことがしづらくなりました。採用が決まった人と実際に直接会うこともなく、そのまま入社という人も出てきています。直接会わなくても、オンラインでの面談があるので、顔も知らない人ということはないのですが、リアルで会うのとはやはり違うという感覚の人もまだ多く、戸惑いを覚えている現場もあります。
採用後もこれまでとは違ってきています。オンライン化は採用の時だけではないということです。職種によっては採用後に研修を行うこともありますが、研修も直接行うのではなくリモートで行っています。さらに、勤務も直接会社に行くのではなくリモートで行っているところも増え、実際に会社に足を運ぶことが減ってきています。
■求職者の価値観の変化
コロナ禍において、求職者の考え方も変わってきました。以前は「今の求職者は福利厚生が充実している会社がいいと思っている傾向がある」というような全体像を把握していれば別段問題ありませんでしたが、今は違います。より、重要だと思うところが多様化しつつあるため、幅広く対応する必要が出てきているのです。
以前の求職者の要望といえば、「福利厚生の充実」「雇用の安定」「給料アップ」といったところでした。それが今は、「正社員志向」「ワークライフバランス」「副業可能」というのも人によっては重要視するところになってきました。
「正社員志向」については、今の世の中、さらに非正規雇用に対する不安定さが浮き彫りになってきているため、簡単に解雇されてしまったり、給料が安かったりする状態での雇用よりも、正社員雇用をしてくれるところを選ぶ傾向が強くなっています。また、不安定なコロナ禍において“正社員である”という安心感を持っていたい人も多いのではないでしょうか。
「ワークライフバランス」については、昨今言われてきている働き方改革や健康経営といった考え方の中から、働き手自身も考えるようになってきました。働いて給料をもらうことはもちろん大事ですが、そればかりに気を取られると、休暇をきちんと取らなかったり、残業続きになり働いているが過度に長時間になってしまう場合があります。すると健康被害を訴えるようになったり、モチベーションの低下を訴えるようになったり、心身ともに悪影響を及ぼすということが明らかになり、恐怖感を覚える人が多くなったというのもあるかもしれません。業務中心ではなく、休暇の取りやすさや勤務時間に融通が利くか、どれだけ個人のことを見てくれているのか、ということも今の求職者は会社に求めています。

「副業可能」については、コロナ禍で情勢が不安定だからというのもありますが、そもそも本業だけでは不安だと考えている人や、自分のしたいことを仕事にして稼ぎたいという考えの人が増えてきました。その結果、本業の他に他の仕事も同時にできるということを重要視する求職者が増えたのだと考えられます求職者は安定志向かつ自由な思考を求め、さらにリスクヘッジを考えるようになったと言えるでしょう。
また変わってきたこととして、テレワークやオンライン会議という言葉が定着してきており、働き手側からも、そういったことに対応できる職種への求職が増えてきています。特に優秀な人材である人ほどテレワークやオンライン会議に対して魅力を感じており、柔軟な対応ができていないと、今後は求職対象から外れてしまう可能性も。これまでテレワークやオンライン会議を導入していなかった企業でも、優秀な人材を採りたいと思っているのであれば、本当に導入ができないのかどうかを考えてみる必要があといえるでしょう。
コロナ禍において、採用の現場は変わってきていますが、結局転職希望者は増えているのか減っているのかというと、実際にはコロナ前とほどんと変わっていません。ただ、求めるものが変わっているだけです。
今現在、転職を考えている層としては、大きく分けると2つのパターンがあります。
・コロナ禍で在籍中の企業の先行きが不安なため転職したい
・求人が減っている中で、希望の条件で転職ができるか不明なため様子見をしている
つまり転職を考えている人は、今でも一定数いるということです。一般的に転職先を決めてから退職を企業に伝えるというケースも多いので、採用を行えば以前と同程度の応募が来るといえます。

■コロナ禍だからこそ「出向を受け入れる」という選択肢
コロナ禍において、採用方法や求職者の考え方に変化がありました。企業単位でみると、従業員過多となっている企業と従業員不足になっている企業のアンバランスが発生しています。
在籍出向は、出向社員が出向元と出向先の両方と労働契約を結んで、出向期間中は出向先で働くという仕組みです。出向先の企業は出向元の企業と出向契約を交わして働き手に来てもらいます。、そのためそもそも採用するために広告を出したり、ナビサイトに掲載したりと、宣伝をする必要がないためコストがかかりません。また、出向には在籍出向と転籍出向の二つがあり、在籍出向を選ぶということは、出向元が解雇したくない優秀な人材という可能性が非常に高いため、低コストで優秀な人材に働いてもらえるということです。
また通常の採用を行った場合、採用コストをかけてようやく採用を決めた社員がいたとしても、入社前に内定辞退があったり、ドタキャンにあったりする可能性もあります。ですが在籍出向の場合は、個人との契約だけではなく会社同士の契約も結んでいるため、よほどのことがない限り出向辞退やドタキャンが起こる心配はありません。なぜなら出向元の企業の信用問題にかかわることになるからです。
これが、企業と個人との契約ではなく、企業間の契約がある強みです。
さらに言うと、人手が足りなかったり、将来人手不足になるのを見越して新しい人員を採用したりしたとしても、いざ働いてもらうと合わなかったという可能性もあります。能力的に厳しかったり、人間関係がうまくいかなかったり。そうなると、その人を入社させるために採用コストをかけ、再び人員を採用するためにさらに採用コストをかけることになってしまうのです。ですが、在籍出向の場合は、仮にマッチング度が低かったとしても、出向期間を決めて社員として働いてもらうので、職場に合わなかった場合のリスクが低いというメリットがあります。
つまり、採用が難しい場合、在籍出向で受け入れ先企業となることで、採用コストもリスクも抑えられるということです。
➡参考「在籍出向で使える「産業雇用安定助成金」とは?「雇用調整助成金」と何が違う?」
➡参考「「雇用シェア」「従業員シェア」ってなに?」
■コロナ禍の採用で気を付けたいこと
ここまでコロナ禍における求職者の思考がどのように変化したか、企業が求められているものについてお話してきました。コロナ前と同じように転職をしたいと考えている人がいたとしても、コロナ前と同じような採用のシステムをとっていては人は集まりません。採用をかけているのに、人が集まらず、転職希望者がいないのでは?と考える前に、自社がコロナ禍に適した採用方法をしているのかというところに目を向けて見ましょう。
また採用を行う時に気を付けたいこととして、採用の方法がこれまでとは変わってきています。対面で面接などができなくなっているので、採用の判断基準は採用を行う前に明確に持っておくことが、混乱を招かない方法です。
今一度採用の方針を見つめなおし、時代に合わせ求職者の思考の変化を理解して対応をすれば、必ず採用は順調に進むでしょう。